2020年1月31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)、ついにイギリスがEUを離脱しました。
2016年6月23日に行われた国民投票でEU離脱が決定して以来、長い月日が流れ、ついにです。
こんなに難航した話し合い、どんな着地点を見つけたのか気になります。
この記事では2020年1月31日以降何が変わったのかをざっくり簡単にご紹介します。
移行期間
離脱と言っても11か月の移行期間を設けています。
EUの離脱には法律や施設設備の準備に時間がかかるため移行期間をいう準備期間を11か月設けているということです。
移行期間中はEU法を守り、予算も拠出します。多くのことは離脱前とほぼ同じ状況を保ちつつ、一部、すでに変わったこともあります。
すでに変わったこと
EU加盟国で行われる議会・首脳会議に関すること
EU議会の議席を失う
イギリスはEU議会に73議席持っていましたが、その議席を失いました。
EUを離脱するわけなので、EUの政治には関与できなくなります。
しかし先に書いた通り、移行期間中はEU法に従う必要があり、司法上の争いについても、EU司法裁判所が最終判断を下すこととなっています。
EU首脳会議にも参加しない
今後、イギリスがEU理事会の首脳会議に参加したい場合は、特別な招待が必要となります。
ドイツは市民の身柄を引き渡さない
犯罪容疑者がドイツに逃げた場合、イギリスへの身柄の引き渡しができない可能性があります。
カルロス・ゴーンの件を想像するとわかりやすいかと思いますが、日本で逮捕されてもレバノンに逃げてしまえば日本の警察は逮捕することができませんよね。レバノンにゴーンさんを渡してくださいという要求ができません。日本とレバノンの間にそのような協定がないからです。
イギリスで逮捕された人がドイツに逃げたとしても、ドイツはその身柄を引き渡しませんということです。
ドイツ憲法では、EU加盟国以外の国にはドイツ人の身柄を引き渡さないと定められているためです。
連邦司法省の報道官は取材に対し、「この例外措置はEU離脱後、イギリスには適用されない」と説明したため、イギリスがEU離脱したら他の外国同様に身柄の引き渡しはしませんということです。
イギリス内務省は、移行期間中のイギリスでも有効だと言っています。その一方で、その国(今回で言うドイツ)の法律でイギリスへの身柄引き渡しが認められていないのであれば、「その国が当該人物に関する裁判や刑罰を引き受けることになるだろう」と指摘しています。
記念硬貨の発行
2月1日から、ブレグジットを記念コインが約300万枚流通しています。記念硬貨には、「1月31日」という日付、「平和と繁栄、そして全ての国と友情」というメッセージが刻まれています。
イギリス政府は、離脱が予定されていた昨年10月31日に合わせて同様の記念硬貨を作っていましたが離脱が延期されたため、この硬貨は「リサイクル」されました。
パスポートのデザイン変更
1988年以降、イギリスのパスポートは暗い赤色でしたが、以前に使われていた青色が復活することとなりました。
1921年から使われてきた「象徴的な」青と金のデザインが戻すためです。
青色のパスポートは段階的に導入され、2020年中旬以降に発行されるパスポートは全て青色となります。
移行期間中は変わらないこと
2020年12月31日までの移行期間中、まだ準備が整っていないので離脱前と同じにしておこうということもあります。
EU加盟国への出入国
EU加盟国同士の行き来は国内移動のようになっており、行き来が自由です。
イギリスはEUを離脱したことによってEU加盟国に入国する際は外国人扱いされる予定ですが、移行期間中は今まで通り、EU加盟国用のゲートを通って自由に行き来してよいこととなっています。
就労の自由
EU加盟国間では他の国に住んだり仕事をすることができます。
イギリスがEUを離脱したことにより自由ではなくなる予定ですが、移行期間中は今まで通り移動・就労が自由にできます。
運転免許証
EU加盟国では運転免許証も国内扱いされています。
今回の離脱によりイギリスの運転免許も外国の運転免許扱いとなる予定ですが、移行期間中は今まで通りでよいこととなっています。
欧州健康保険カード (EHIC)
EU加盟国、スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインで有効な保険で、このカードを持つEU市民は国営の医療サービスを受けることができます。
移行期間中はイギリス人も有効のままということになっています。
貿易の関税
移行期間中は新しく関税を導入したり、物品の検査をしないこととなっています。
EUへの予算を払う
イギリスは移行期間中も、EU予算を支払い続けます。
逆にEUから資金援助を受けているプログラムには、引き続き資金が提供されます。
イギリスがEU離脱したとニュースで見たけれど、何か変わった気がしない…と思っている方も多いと思います。
今は移行期間中で、多くのことが以前と同じままなので大きく違いはありません。
12月31日までの11か月でさまざまな法律と施設設備の準備が必要で、今大忙しです。
実際に移行期間が終了し、いよいよ貿易に関税がかかったり、就労が認められなくなる日がまたひと騒動となるでしょう。
まだまだブレクジットからは目が離せません。